サンプルケース

所有権登記名義人である会社Aが破産手続又は民事再生手続中である場合に、同社所有の不動産を買主Bに売却します。

登記に必要な書類

売主(法人)が破産手続中の場合

  • ※破産管財人の印鑑証明書は、裁判所書記官が作成したものを使用する場合は3ヶ月以内である必要はありません。
  • ※所有権移転登記のみの必要書類を記載しています。
    その他の登記、例えば、売主の住所変更、抵当権抹消や 買主の抵当権設定登記がある場合は、その登記に応じて別途書類が必要になります。詳しくは登記に必要な書類等一覧をご覧ください。

売主(法人)が民事再生手続中の場合(監督委員および管財人が選任されていない場合)

  • ※所有権移転登記のみの必要書類を記載しています。
    その他の登記、例えば、売主の住所変更、抵当権抹消や買主の抵当権設定登記がある場合は、その登記に応じて別途書類が必要になります。詳しくは登記に必要な書類等一覧をご覧ください。

売主(法人)が民事再生手続き中の場合(管財人が選任されている場合)

  • ※所有権移転登記のみの必要書類を記載しています。
    その他の登記、例えば、売主の住所変更、抵当権抹消や買主の抵当権設定登記がある場合は、その登記に応じて別途書類が必要になります。詳しくは登記に必要な書類等一覧をご覧ください。

売主(法人)が民事再生手続中の場合(監督委員が選任されており、かつ、不動産の売却が監督委員の同意が必要な行為として指定されている場合)

  • ※所有権移転登記のみの必要書類を記載しています。
    その他の登記、例えば、売主の住所変更、抵当権抹消や買主の抵当権設定登記がある場合は、その登記に応じて別途書類が必要になります。詳しくは登記に必要な書類等一覧をご覧ください。

破産中の会社の場合

① 破産管財人の資格・権限

破産手続開始の決定があった時に破産者が有する一切の財産は破産財団となります。破産財団とは、破産者の総財産の集合体です。これにより、破産者は自己の財産の管理処分権を失い、破産財団の管理処分権は裁判所により選任される破産管財人に専属することになります。したがって、破産財団に属する不動産の取引においては、登記簿上の所有者(破産者)ではなく破産管財人が当事者となり、売買契約を締結することになります。しかし、破産管財人が破産財団に属する不動産を任意売却するには、裁判所の許可を得なければならないことに注意する必要があります。

法人である債務者について破産手続開始の決定があったときは、裁判所書記官は職権で、遅滞なく、破産手続開始の登記を嘱託します。破産者が法人である場合は破産手続開始の登記は会社登記記録に登記されますので、会社謄本にて破産管財人の資格を確認します。なお、会社所有の不動産の登記記録には破産の登記はされません。

破産管財人は裁判所の監督に服し、破産管財人が数人あるときは、原則として共同して職務を行うこととなりますが、裁判所の許可により、単独で職務を行うこと又は職務を分掌することが可能となります。なお、この破産管財人の選任および単独職務又は職務分掌の旨は登記されます。

② 破産管財人に関する添付書類

(ア) 破産管財人の印鑑証明書として、次のいずれか1つを添付しますが、実務上は(b) の場合が多いと思われます。なお、(b)を添付する場合は3か月以内のものである必要はありません。
  • (a)住所地の市区町村長が作成した印鑑証明書(3か月以内のもの)
  • (b)裁判所書記官が作成した印鑑証明書
  • (c)登記所が作成した印鑑証明書(3か月以内のもの)
(イ) 裁判所の発行した破産管財人の選任書(3か月以内のもの)
(ウ) 裁判所の売却許可書

この許可書があれば、破産者の所有権に関する登記識別情報(登記済証)は必要ありません。

③ 担保権消滅制度について

(ア) 意義

破産管財人が行う任意売却には、破産管財人と担保権者との同意を前提として裁判所の許可を受けて所有権移転と担保権の抹消を同時に行い、代金の一部を財団に組み入れその残額を担保権者に弁済するという従来の方法と、新破産法により制定された「担保権消滅制度」を利用する方法があります。

担保権消滅制度とは、担保権者が売却代金や財団組入額に同意せず、又は後順位担保権者がその抹消に応じないような場合に、破産管財人が裁判所の許可により担保権を消滅させて任意売却を行う制度です。

(イ) 手続

担保権消滅制度を利用した任意売却においては、買主は売買代金を分けて支払うこととなります。つまり、買主は、売買代金から財団組入額等を除いた額を裁判所に直接納付しなければならず、財団組入額等については売主である破産管財人に支払います。そして、担保権は財団組入額等を除いた額を裁判所に納付したときに消滅します。裁判所書記官は抹消された担保権に係る登記を嘱託し、裁判所は納付金を担保権者に配当します。

上記のように、担保権の抹消登記は裁判所書記官の嘱託によってなされますが、所有権移転登記は買主と破産管財人との共同で申請することになるため、不動産の引渡しを含めてその取引の同時決済には注意を要します。

なお、担保権消滅制度は、従来の任意売却手続を補完する手続きであり、従来の任意売却を実施するにつき障害がある場合に限って利用すべきであるとされています。

民事再生手続中の会社の場合

① 契約の相手方の資格・権限

民事再生手続開始の決定がなされると、会社登記記録に再生手続開始の旨が登記されます。破産手続と異なり、原則として民事再生手続が開始しても再生債務者(当該会社)はその財産の管理処分権を失いませんので、会社代表者と契約をすることが可能です。ただし、場合によっては再生債務者の権限が制限されている場合がありますので、会社謄本を確認し、売買契約締結の相手方を特定する必要があります。

(ア) 監督委員および管財人等が選任されていない場合

この場合、再生債務者(当該会社)はその財産の管理処分権をいまだ有していますので、会社代表者と契約をすることが可能です。ただし、不動産を売却するためには裁判所の許可を得なければならない場合があり、この許可の要否は登記されませんので当事者への確認が必要です。なお、裁判所の許可を得ずに売却した場合はその行為は無効となりますが、善意の第三者には対抗できません。

(イ) 監督委員が選任されている場合(イラストのケース)

監督委員とは、裁判所から選任され、再生債務者の行う一定の法律行為につき同意をする権限を有する者をいいます。監督委員が選任されている場合は、会社登記記録にその旨の登記がされますので、その資格および監督委員の同意が必要な行為を会社謄本により確認します。

不動産の売却行為が同意事項に指定されている場合は、監督委員の同意がなければ売却できません。監督委員が数人ある時は、原則として共同して職務を行うことになります(単独職務および職務分掌は登記されません)。なお、監督委員の同意を得ないでなした売却は無効となりますが、善意の第三者には対抗できません。

監督委員の同意に加えて裁判所の許可も必要な場合がありますが、この許可の要否は登記されないので当事者への確認が必要です。この場合、監督委員の同意があっても、裁判所の許可がなければその行為は無効となりますが、善意の第三者には対抗できません。

(ウ) 管財人が選任されている場合

管財人とは、再生債務者の財産の管理又は処分が不適切である場合などに裁判所から選任され、再生債務者に代わって、その業務の遂行および財産の管理を行う者です。管財人が選任されている場合は、会社登記記録にその旨の登記がされますので、その資格を会社謄本により確認します。

管財人が選任されている場合、財産の管理処分権は管財人に属することとなるので、会社の代表者は不動産を売却することはできません。管財人が数人あるときは、共同職務行使か単独職務行使か又は職務分掌であるかを会社謄本により確認する必要があります。

管財人が不動産を売却するためには裁判所の許可を得なければならない場合がありますが、この制限は登記されないので当事者への確認が必要です。裁判所の許可を得ないでなした行為は無効となりますが、善意の第三者には対抗できません。

② 添付書類

(ア) 監督委員および管財人が選任されていない場合

原則として会社代表者が売却に関する権限を有していますが、裁判所の許可が必要な場合は、「裁判所の許可書」を添付する必要があります。

(イ) 管財人が選任されている場合

管財人が登記の申請をすることとなり、その「選任書」の添付が必要となります。また、管財人の印鑑証明書として、下記のいずれか1つを添付します。

  • (a)登記所発行の印鑑証明書
  • (b)裁判所書記官が作成した印鑑証明書

管財人が不動産を売却するに際し裁判所の許可が必要な場合は、「裁判所の許可書」を添付する必要があります。

(ウ) 監督委員が選任されており、かつ、不動産の売却が監督委員の同意が必要な行為として指定されている場合

「監督委員の同意書」を添付する必要があります。監督委員は、印鑑を法務局に届け出ることはできないので、同意書に添付するのは「裁判所書記官が作成した印鑑証明書」となります。監督委員の同意に加えて裁判所の許可が必要な場合は、「裁判所の許可書」を添付する必要があります。

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