サンプルケース

売主甲と買主乙との間で売買契約が締結された後、買主乙がその契約上の買主の地位を第三者丙に対して有償で譲渡する契約を締結することになりました。

登記に必要な書類

買主の地位譲渡契約

  • ※所有権移転登記のみの必要書類を記載しています。その他の登記、例えば、売主の住所変更、抵当権抹消や買主の抵当権設定登記がある場合は、その登記に応じて別途書類が必要になります。詳しくは登記に必要な書類等一覧をご覧ください。
  • ※買主の地位譲渡行為が利益相反行為に該当する場合は、別途書類が必要になります。

買主の地位の譲渡

買主の地位の譲渡とは、契約当事者たる買主の地位を包括的に第三者に譲渡することをいいます。不動産売買における買主乙の主たる権利義務は不動産の引渡を請求する権利と代金支払の義務ですが、契約上の買主の地位にはこれら以外にも契約の解除権や取消権、同時履行の抗弁権等の附帯的な権利義務が含まれます。買主の地位譲渡契約では、買主の地位から生じるすべての権利義務が包括的に譲受人丙に承継され、地位譲渡後は買主乙は当初の売買契約から完全に離脱することになります。

具体例

売主甲と買主乙との間で不動産の売買契約がなされた後、買主乙が第三者丙に対して買主の地位を譲渡するケースとしては例えば以下が想定されます。

  • ①最終残金決済までに買主乙が購入資金の確保ができなくなったケース
  • ②取引物件が農地の場合で当初の買主では農地法所定の許可が下りないケース
  • ③その他何らかの事情で、乙にとって不動産を取得する必要がなくなったケース
    これらのケースは、売主甲に対する債務不履行を回避するため、乙が買主としての地位を第三者丙に譲渡し丙にその債務を履行してもらうことを目的に地位譲渡契約が行われます。
  • ④短期転売が目的の買主乙が中間者の不動産流通税の負担を回避するために買主の地位の譲渡契約を用いるケース
    甲乙間の売買価格がそのまま甲丙間の売買価格になるので、丙に対して仕入れ価格(甲乙間の売買価格)が明らかになってしまうというデメリットがあります。
  • ⑤当初個人名義で締結した売買契約の買主の地位をその個人所有の資産管理法人へ譲渡するケース
    このケースは実務上よく見受けられます。当初は個人名で契約したものの、税金面や融資条件等を考慮した結果、資産管理法人で不動産を所有した方が有利であるという理由などから、個人から法人に買主の地位を譲渡するケースです。

契約当事者と売主の承諾

買主の地位の譲渡は、原則的に甲乙丙の三者契約で行います。買主乙と譲受人丙の二者契約で行うことも可能ですが、二者契約の場合は売主甲の承諾が必要となります。

地位譲渡契約の時期と対価

地位譲渡契約の時期としては、甲乙間の不動産売買契約締結後から残金決済までの間に行う必要があります。甲乙間の売買契約締結後でなければ譲渡の目的である買主の地位自体が発生しておらず、また、残金決済を完了し所有権が乙に移転してしまった後はもはや買主の地位を譲渡することはできないからです。

買主の地位譲渡の対価は丙から乙へ支払われます。一方、不動産の売買代金は当初の契約金額が丙から甲に支払われます。つまり、残金決済時には、①丙から乙への買主の地位譲渡代金と、②丙から甲への不動産残代金が支払われることになります。

契約上の注意点

買主の地位譲渡契約は不動産売買契約ではないことから、乙丙間の買主の地位譲渡契約において丙は以下のような点に注意する必要があります。

  • ①乙が宅建業者であっても、重要事項説明義務や瑕疵担保責任の特例等の宅建業法上の規律を受けない
  • ②乙に不適切な行為があった場合に宅建業法違反の監督処分を行えない
  • ③売主の瑕疵担保責任を免除する規定は、買主が宅建業者である場合は有効であるため、この買主の地位を引き継ぐ譲受人が一般消費者の場合でも瑕疵担保責任免除規定はそのまま有効となる

このように丙は消費者保護上不安定な状態になる可能性がありますので、丙は自らの法的地位を十分に理解したうえで契約を行う必要があります。また、不動産売買契約上の売主はあくまで当初の売主甲であるので、買主の地位を譲り受けた丙が、買主の地位の譲渡人乙に支払う金額は、不動産自体の対価ではないことを理解していることも重要です。

当事者の本人確認

買主の地位の譲渡がされている取引きの場合、売主甲、買主の地位の譲渡人乙、買主の地位の譲受人丙の本人確認および意思確認が必要となります。

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