サンプルケース

不動産を甲から乙へ売却する売買契約書に、「将来その不動産を甲が乙から買戻すことができる」という買戻特約を付すことになりました。これにより、甲は、受領済みの売買代金と売買契約にかかった費用を乙に返還すれば、将来その不動産を買い戻すことができます。

登記に必要な書類

買戻特約付売買

  • ※所有権移転登記のみの必要書類を記載しています。
    その他の登記、例えば、売主の住所変更、抵当権抹消や買主の抵当権設定登記がある場合は、その登記に応じて別途書類が必要になります。詳しくは登記に必要な書類等一覧をご覧ください。

買戻特約

買戻特約付売買契約を締結した場合の買戻特約の登記は、売買による所有権移転登記と同時に申請しなければならず、売買による所有権移転登記と同一の受付番号で受け付けられます。これにより、売主に買戻権があることを第三者に対して対抗できます。

売買に際し、抵当権等が登記される登記記録の乙区の確認を怠ることは通常ありませんが、甲区の買戻特約の登記を見落とすことがまれにあり、買戻特約の登記が抹消されることなく所有権が転々と移転されていることがあります。有効な期間内の買戻特約が登記されている不動産を購入しても、買戻権を行使されると不動産の所有権を失ってしまう可能性がありますので注意が必要です。

買戻特約の登記事項は、下記の①~③となります。

① 売買代金

まず、買主が支払った代金が買戻金額として登記されます。将来の不動産の時価の上下にかかわらず、この買戻金額が買戻しのために返還すべき金額となります。

② 契約費用

契約費用は、契約書に貼付する印紙代や登記費用等の契約に要した費用のことです。

③ 買戻期間

買戻期間を定めた場合は、これを登記することになります。もし、買戻期間を定めなかった場合は、買戻期間は売買の日から5年となります。この期間内に買戻権を行使しなければ、買戻権は効力を失います。また、この期間は錯誤等を理由とした期間延長の更正登記をすることはできません。なお、期間の最長は10年です。

買戻期間を経過した買戻特約が登記されている不動産を売買するときには、その買戻特約を抹消してから売買による所有権移転登記をすることになります。登記記録上買戻期間が経過していても、買戻期間内に買戻権が有効に行使されている可能性もありますので、売買契約にあたってはこの点を当事者に確認をする必要があります。買戻権の抹消登記の申請人は、所有者と買戻権者です。

なお、契約の日から10年を経過している買戻権の登記に関しては、所有者が単独で申請できるようになります (令和5年4月1日より)。

買戻特約付売買と類似した取引(再売買の予約)

① 再売買の予約

再売買の予約とは、売主と買主が今回売買契約を締結する際に、将来その売買の目的物を買戻す旨の再売買契約を締結することを合意することです。例えば、乙が甲所有の不動産を買ったときに、将来乙が当該不動産を売却する場合には甲に対して売却する旨の合意(再売買の予約)をし、かつ、売主(将来の買主になる者)が予約完結権を有するように定めることにより、買戻特約を付した売買と類似の結果を得ることができます。

② 買戻特約付売買と再売買の予約との相違

買戻特約の登記は、売買による所有権移転登記と同時に買戻権を付記登記(本登記)により申請しますが、これに対して、売買予約の場合は、将来の買主への所有権移転の仮登記の申請をすることになります。

また、再売買の予約は再売買のときの不動産の価格により取引が行われることになるので、当初の売買取引価格に縛られることなく売買代金を定めることができます。

さらに、再売買予約の場合は、買戻期間のように最長10年という期間制限はなく、再売買予約を仮登記する場合は、買戻特約登記のように所有権移転と同時に申請する必要もありません。

買戻特約の担保機能

買戻特約は売買代金と契約費用の返還を条件として売主に不動産を返還する特約であるため、取引実務においては、買戻特約が融資金の担保として機能することがあります。例えば、甲が乙から8,000万円の融資を受けることになった場合を想定します。

まず、融資をする乙が買主となって、売主甲と不動産の売買契約を締結します。これにより、甲は売買代金8,000万円を取得することになりますので、8,000万円の融資を受けたと見ることができます。そして、この売買契約に買戻金額を8,000万円とする買戻特約を付して、その旨を登記します。これにより、甲は8,000万円を乙に返還しなければ不動産を取戻すことができなくなり、「乙が売買代金の形で融資した金額(8,000万円)の返還を受けない限りその不動産を返還しない」という担保的機能を買戻特約が果たすことになります。

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