サンプルケース
信託契約において、受託者(信託銀行B)の辞任に伴い、新受託者(信託銀行C)を選任します。
登記に必要な書類
受託者の変更(受託者の辞任に伴う新受託者の選任)
受託者の辞任
受託者が辞任するケースとしては、次のような場合が考えられます。
- ① 信託契約に定められた辞任についての要件を満たした場合
- ② ①以外の事由により、受託者が辞任を必要とする事由が生じ、委託者および受益者の 同意を得た場合
- ③ ①②によらず、やむを得ない事由がある場合に、裁判所の許可を得たとき
新受託者の選任
辞任により受託者の任務が終了した場合、新たな受託者は次のような方法で選任されます。
- ① 信託契約に新たな受託者が定められている。
- ② 信託契約に新たな受託者が定められていない場合、又は、新たな受託者として指定された者が信託の引受けをしない場合において、委託者と受益者が合意により新たな受託者を選任する。
- ③ ②において委託者と受益者間で合意に達しない場合、利害関係人の申立てにより裁判所が選任する。
受託者変更期間中の扱い
新受託者が決まるまでの間に信託財産を管理する者が不在となることを避けるために、信託契約に特段の定めがない限り、新受託者が信託事務の処理をすることができるようになるまで、前受託者は引き続き信託財産の管理をすることとされています。
前受託者から新受託者への信託財産の承継
受託者が辞任し新受託者が選任された場合の信託財産の承継は、辞任の方法によって承継の時期が異なります。
① 原則的な場合
前受託者が辞任した時点に遡って、前受託者から新受託者に信託財産が承継されることとなります。
② 例外的な場合
受託者が委託者および受益者の同意を得て辞任した場合、または信託契約の定めに従って辞任した場合には、信託契約に特段の定めがなければ、新受託者が就任した時点で、前受託者から新受託者に信託財産が承継されます。
登記申請
前受託者から新受託者への信託財産の所有権移転登記を、新受託者を登記権利者、前受託者を登記義務者とする共同申請により行います。登記原因は「年月日受託者辞任による変更」となります。なお、登記原因日付については、上記【前受託者から新受託者への信託財産の承継】①の場合は登記原因日付は前受託者の辞任日となりますが、上記【前受託者から新受託者への信託財産の承継】②の場合は新受託者の就任日となります。
添付書類
前受託者から新受託者への信託財産の所有権移転登記には登記原因証明情報として①②を添付します。
① 辞任届
委託者および受益者の同意を得て辞任した場合は、委託者および受益者の同意を得て辞任した旨の書面、裁判所の許可を得て辞任した場合は、許可決定書を添付します。
② 新受託者の選任を証する書面
新受託者の選任を証する書面は選任方法によって異なります。上記【新受託者の選任】①の場合は、信託契約の定めに従って選任したことを証する書面、上記【新受託者の選任】②の場合は、委託者と受益者の合意書、上記【新受託者の選任】③の場合は、裁判所の新受託者選任決定書を添付します。
登録免許税
受託者変更に伴う所有権移転登記に関する登録免許税は非課税です。