登記上の共有持分割合の是正と贈与税

サンプルケース

土地付の建物を3000万円で購入し、
夫Aと妻Bが持分各2分の1の共有名義で所有権登記をしました。
購入資金の出資割合は次のとおりです。
なお、銀行は購入資金を融資する際に債権額2400万円の抵当権を設定しました。

登記に必要な書類等

※所有権更正登記のみの必要書類を記載しています。

贈与が負担付きでない場合

出資割合と持分割合の不一致による贈与税の課税

不動産を購入しその所有権移転登記をする場合に、購入資金の出資割合と登記上の持分割合が同じであれば贈与税の課税原因にはなりませんが、本ケースのように購入資金の出資割合と登記上の持分割合とが同一でないときは、贈与税の課税原因となる可能性がありますので注意が必要です。

持分割合の是正の登記

登記上の持分割合を資金の出資割合に是正する方法としては以下の方法があります。
①  現在の所有権移転登記を「錯誤」を原因として抹消し、改めて真正な所有権移転登記をする方法
この方法では、まず、AB各2分の1共有名義の所有権移転登記を「錯誤」を登記原因としていったん抹消します。それにより、所有権はいったん前所有者に戻ります。そして、再度、前所有者から真正な持分割合でABへ所有権移転登記をします。ただし、この方法は、次のような問題点があります。
(ア) 抵当権者の承諾
本ケースのように、抹消されるABの所有権を目的とし銀行の抵当権が設定されている場合、その銀行から抹消の承諾を得る必要があります。この承諾書(印鑑証明書付き)が得られないと所有権を抹消することはできません。
(イ) 前所有者の協力
再度所有権移転登記をするためには、前所有者(ABへの売主)から印鑑証明書、登記識別情報、登記委任状等の交付を再度受ける必要があります。
(ウ) 費用
所有権移転を2回行うことになるので、既に納付した登録免許税と同じ金額を再度納付しなければなりません(所有権を抹消しても登録免許税は還付できません)。また、区分建物以外の建物の所有権保存登記を抹消すると、当該建物の表題部登記記録が閉鎖されることとなり、再度、表題登記と所有権保存登記をしなければならず、その分の登記費用もかかってしまいます。
そもそも、登記されたAの持分10分の5とBの持分10分の5の内10分の1については真正な登記であり、全ての所有権を抹消する必要もないといえますので、(ア)~(ウ)の手間や不経済を避けるためにも次の②の方法によった方が良いと思われます。
②  現在の所有権登記を「錯誤」を登記原因として所有権更正登記をする方法(イラストのケース)
この方法は、Bの多すぎる持分10分の4につき誤った登記をしてしまったとして、AB各2分の1をA10分の9、B10分の1に是正する所有権更正登記をする方法です。この持分割合の更正登記により持分割合を是正した場合、次のようなメリットがあります。
(ア) 抵当権者の承諾
持分割合の更正登記では、ABの共有持分全部を目的として銀行の抵当権設定登記がなされている場合であっても、銀行の承諾は不要です。ただし、AB共有をAだけの単独名義としたり、AB共有をACの共有とする共有者の一部が入れ替わるような場合は、登記上利害関係を有する第三者の承諾が必要となります。
(イ) 前所有者の協力
持分割合の更正登記の場合には、前所有者の協力は必要なく、共有者ABのみで登記の申請ができます。ただし、AB共有をAだけの単独名義としたり、AB共有をACの共有とする共有者の一部が入れ替わるような場合は、ABの前の所有者(ABへの売主)から印鑑証明書、登記識別情報、登記委任状等の交付を受けなければなりません。
(ウ) 費用
所有権更正登記の登録免許税は、不動産1個につき1000円と低額です。
③  「真正な登記名義の回復」を登記原因として持分移転登記をする方法
前記①の場合や、前記②の共有者の一部が入れ替わるような場合は、登記上利害関係を有する第三者の承諾書(印鑑証明書付き)や前所有者の協力が必要となります。これらの者の協力を得ることができず、②の所有権更正登記によることができない場合には、「真正な登記名義の回復」を登記原因として持分移転登記をすることにより持分割合を是正することもできます。
(ア) 抵当権者の承諾
不要です。
(イ) 前所有者の協力
不要です。
(ウ) 費用
「真正な登記名義の回復」による所有権移転登記の登録免許税率は、固定資産評価証明書の価格に対し1,000分の20となります。

連帯債務と贈与税

銀行借入れがAとBの連帯債務であっても、本ケースのように実際の負担額と登記上の持分が異なっていれば贈与税は課税される可能性があると思われます。

↑ ページのトップへ